「垂乳根の」
語意・・・「母」あるいは「親」にかかる枕詞。
短歌には特定の語句を導く枕詞(まくらことば)と言う五音のことばがあります。基本的には意味はなく、リズムを整えるためなどに用いられます。
この「たらちねの」は、最も有名な枕詞の一つで、その字から分かるように、母乳で多くの子供を育て続けてしぼんでしまった母の胸を表します。
私の好きな短歌でこの枕詞を用いたものに下記の歌があります。
「たらちねの母がつりたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども」
そのまま訳すと「年老いた母がつってくれた青い蚊帳はたるんでいたけど、その下で私はすがすがしい気分で眠れました」という意味になります。
この歌の背景を想像するとかなりグッときてしまいます。
久しぶりに田舎に帰省した息子。
年老いた母は息子との久しぶりの再会を大いに喜び、息子のために村に一軒しかない雑貨屋へ赴き、蚊帳を新調することにした。
息子の来た日、新品の青い蚊帳を懸命にぴんと吊るそうとするが、年老いて力の弱った母はなかなか上手く張れない。
「お母さん、俺、手伝うよ。」「いいんよ、あんたは向こうで休んどって。母ちゃん一人でできるさけ。」
そんな会話を交わしながらもどうにか蚊帳は天井から吊るされることとなる。
結局はたるんで不恰好になってしまった蚊帳だが、息子は母の思いの深さを感じ取り、その下で深い眠りにつくのであった。
以上が私の頭に浮かんだイメージです。いかがでしょう。
たった31音の中にも素敵なドラマがあるものですね。
by kubogon | 2007-01-23 16:27 | 教育

